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白昼夢、或いは全部勘違い

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「世界が消えてった夜も"世界が消えた"ということがあった」に関するそこそこ長いポエム

世界が消えてった夜も"世界が消えた"ということがあった

大森靖子「ドグマ・マグマ」Music Video/YOUTUBE Ver. - YouTube

こんなに優しい歌詞があるのか、と思った。

「世界が消える」で思い出したのは、「ワンダフルワールドエンド」だ。

「ワンダフルワールド」のエンドなのか、
ワンダフルな「ワールドエンド」なのか、
私は初め、ワンダフルな「ワールドエンド」だと思った。
ロンドンにあるヴィヴィアン・ウエストウッドの本店であり、嶽本野ばらのデビュー作「世界の終わりという名の雑貨店」にも引用されている「World's End」という言葉が私の中に既にあったからだろう。
(世界の果て、ではなく)世界の終わりは素晴らしいもの、そうであればいいと思った。「世界の終わり」だなんて、なにも地球が爆発するという話ではない。好きな人の機嫌を損ねたり、体重が増えたり、ニキビができたりしたくらいで世界は簡単に終わる。

大森靖子&THEピンクトカレフが解散した話 - 白昼夢、或いは全部勘違い

「勉強してないからテストの結果が終わってる」
「明日デートなのにニキビできたから終わった」
私が思った世界が終わる、は割と簡単なことだ。

それに対して「世界が消える」とは。
「世界が消えてった夜」で想起するのは、大切なものが手から溢れたような日の夜のことだ。
いつも引用する一番好きな歌詞、「お気に入り 使い古した絶望」のことを思い出す。

いつもいつも、「忘れてなるものか」と思っていた。
「私が悲しかったことを、私が忘れてしまったら、あの時悲しかった私が可哀想」だからだ。いつまでも忘れられない記憶に名前をつけてもらえたような気になったのが「お気に入り 使い古した絶望」という歌詞だった。
夏を呪ったり夏を呪ったりしながら、「消してやるもんか」と思い続けていた。
消したら、忘れたら、許したら、私の負けだから。「可哀想な私」のことを私だけは認めてあげないといけないと思っていた。

「世界が消えてった」は、世界そのものが消えるというよりは、私が世界だと思っていたもの、あるいは私が全てだと思っていたものから私が消えることや、私が消えたと認めることで、「世界が消えてった夜」はそういう実感によって消えたくなるような気分や、消したくなるような気分に苛まれる夜のことだと思う。
そして、私は長いこと、それに抗うことだけが正解だと思っていた。
忘れることも許すことも怖かった。
私が悲しかったことまで、なかったことにされるのではないかと思っていた。

この曲のMVが公開された数日後、大森さんは「許す」と言っていた。

『許せないやつ全員許す!』の精神を身につけて先に進まなきゃならんです。今の私にも言えることですね。折角人間には『覚えていることを覚えているまま忘れる』機能が備わっているのだから。忘れましょう。

大森靖子 公式ブログ - ハイパーメンヘラモード対処法 - Powered by LINE

忘れていいの?許していいの?
「なかったことにされちゃうよ」じゃなかったの?と、「ドグマ・マグマ」を聴く前の私なら、思っていただろう。
(今も、ちょっと、そう思ってるけど)

世界が消えてった夜も"世界が消えた"ということがあった

忘れることや許すことがずっと怖かった。
けれど、もし、消えたとしても、「消えた」ということはなくならない。
だとしたら、それは私にとって大きな救いだな、と思った。

思い出したのは、これ。

大丈夫さ あの痛みは 忘れたって消えやしない

私が18歳の頃宗教にしていたバンドがつい最近歌っていた歌だ。

「そんなこともう忘れなよ」とみんな簡単に言うし、私だって言うこともある。
「反応しちゃだめだよ」と言われることもある、私だって言うかも知れない。

大森さんが「なかったことにされちゃうよ」で示してくれたのは、「悲しかったことや辛かったことを有耶無耶にしない」だと思っていた。

いつもいつもことあるごと それ以外はなかったことにされました

「なかったことにされちゃう」ことに目を向けること、なかったことにしないこと、それがとても嬉しかった。

「全感情のノーマライズ」について - 白昼夢、或いは全部勘違い
(これ相当前に書いたから今読むと「なんか違う」という気持ちになるけど、だから書き残す意味があるんだろうな、とか)

けれどまあ、ずっと抱えているのは、燃費が悪いことだ。
いい加減認める。まあしんどい。重いし。
「捨てるか迷ってとっておいた絶望」が役立つことはあんまりない。こういう文章を書き殴る時くらいだ。

世界が消えてった夜も"世界が消えた"ということがあった

消えても、「消えた」ということは確かにあったのだと。
忘れても、「忘れた」ということは確かにあったのだと。
許しても、許さなかったことだって、確かにあったと思ってもいいのかも知れない。
忘れても、悲しかったことはなかったことにされないのかも、知れない。

なんて優しい歌詞だろう、と思った。

(追記)

「なかったことにしない、でもひきずられない」

ひきずらない、じゃなくて、ひきずられない、なんだよなあ。

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