読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

白昼夢、或いは全部勘違い

コンテンツの消費

全部どうでもよくて全部大事だったのに、なかったことにしたのは私だった

大森靖子ちゃんが2016年8月から3ヶ月連続でリリースするシングルのアー写が公開された。

そのひとつ、「勹″ッと<るSUMMER」。

大森さんと同じく、2000年代初頭に中高生だった私には大変に見慣れた顔つきだ。
眉の細さ、前髪とおでこ、勝気な顔つき、バスケット部の女の子のようだ。
これを見たファンの人の感想、と、大森さんのコメント。


「全部どうでもよくて全部大事だったからなかったことにされたくないよね。」
結構なショックだった。
なぜなら、「当時自分たちが一生懸命やってたくだらん日常のこだわり」を「なかったこと」にしたのは、他ならぬ私だと気づいたからだ。

はてブを読み書きしたりTwitterにへばりついたりしている人の中では平均的だと思うが、2000年代初頭にはろくな思い出がない。
受け入れることも思い出に昇華することも忘れることも出来なくて、「捨てるか迷ってとっておいた絶望」としておいてある。
ゴミ捨ての日を逃した燃えないゴミのような、または引っ越しのたびに開けてはそのまま閉めてまた運ぶダンボールの中身ような記憶ばかりだ。

面白いこと 本当のこと 愛してるひと 普通のこと
なかったことにされちゃうよ
なかったことにされちゃうよ

私はこの歌詞を、自分を肯定してくれるものだと思ってた聴いていた。
けれど、あの頃私が大事にしていたもの、25センチのルーズソックスも、ぁぃぅぇぉが小さかったことも、デコメはパケ代がかかることも、好きな人のメールだけランプが違う色に光ることも、前髪を切りすぎたことも、耳が全部隠れるように前よりに三つ編みにしてたことも、浮いてる前髪にヘアピンを平行に挿したことも、全部なかったことにしたのは、思い出さないように奥にしまって開かないようにしたのは、私だった。

「花が好きなのを黙っていたことも名字が嫌いなことも2年もすれば忘れて
その3年後には今気にしているようなことはどうでもよくなる
…その5年後 16歳の自分が大切なものをドブに捨ててきたことに気づく」
「……何それ予言?」
「人類にあまねくふりかかる呪い
世界の決まり」

 

HER (FEEL COMICS)

HER (FEEL COMICS)

 

 大好きなヤマシタトモコ先生の短編集に出てくる、私からしたら向こう側、「スカートは膝から大体3:2の不文律」の女子高生へお隣に住む写真家が語る世界のきまりを思い出した。

もしこれが世界のきまりなら、まあ、仕方ないのかな、と思った。

 

ともかく、もう、私はすっかり大人になったから、住むところだって仕事だって毎日食べるものだって全部自分で決めている。

「誰かの自由な意志や表現を捻じ曲げる大人」という仮想敵の圧力なんて受けていないし、誰も私がひっそり仕舞い込んでいるものを「なかったこと」になんか出来ない。
だから、「なかったこと」にするのは、結局、自分だと、大森さんに教えてもらった、ような気がした。

 

泣けるかな、まだ泣けない。

 

広告を非表示にする