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白昼夢、或いは全部勘違い

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祝!興行収入2億円突破!映画「同級生」を公開初日に見てきた話、及び二次元バンドマンとしての草壁くんについて

中村明日美子様の大人気漫画「同級生」を原作とするアニメ映画が2016年2月に公開されたが、その興行収入が2億円を、動員数が13万人を突破した(2016年4月現在)とのことなのでそれを記念して公開初日の日記と思ったことを綴る。主にべた褒め、それから蛇足。

 
「同級生」映像化のニュースを初めて見たとき、正直、「おいおい、やめとけよ」と思った。
子どもの頃、「好きな漫画がアニメ化される→なんか思ってたのと違う…」に何度か遭遇してから、漫画のアニメ化は割と苦手だ。だから見ない、それが一番平和だと思っていた。
あの絵をどうやってアニメにするの?水彩とPCで描かれたあの既視感のない色彩を、パキパキベタベタにしてどうするの?
長らくアニメを見ていないせいか、アニメ=パキパキベタベタ、だと思っていた。
それについては先に謝る、ごめん。悪いのは私じゃなくて幻想魔伝だから。
そもそもアニメは殆ど見ない。
 
一応、告知動画見ておくか、と、そのくらいの気持ちで見たて、びっくりした。「中村明日美子様の漫画をアニメにする」ということが、実現されていたことに心底びっくりした。
これ、「同級生」が好きな人たちが作ってるんだろうな、と思った。
 
中野で開催されていた原画展にも足を運んだ。
白黒の原画を見るにつけ一層、これはどうやって動くの…?という思いはしたが、原画展に合わせて飾ってあった映画のキービジュアルが大変に丁寧で、また設定画集に佐条くんにのみ制服の袖のボタンをきっちり留めるというものがあり、安心して映画を観ても大丈夫だろう、と思った。
(その少し前の銀座の画廊にも行った。初めての銀座だった。)
 
結構気合を入れて、公開初日の朝一番に見に行った。蛇足として後述するが、その日の午後から予定があった為でもある。
映画を公開初日に観に行くのは初めてだった。映画館に行くのは「悪童日記」ぶりだろうか。
 
同じく明日美子様を愛読している夫に同行をお願いした。そういえば私が初めて明日美子様を読んだのは彼が志村貴子先生特集目当てに買ってきた「f」に掲載されていた「ウツボラ」だった。
そこそこ大きな映画館、売り切れこそなかったようだが、ほぼ満員と言ってもいいような埋まり具合だった。
男性は、全部で3人くらいだったろうか?
こんなに女の人しかいない空間は初めてだな、とそわそわしていたら映画が始まった。
 
映画公開初日の初回というのはこういうものなのだろうか、販売開始時刻にPCにかぶりついてなければ取れないような良い席に座っていたのもあるかもしれないが、とにかく観客の一体感というのか、全員がかぶりつき、一斉に息を飲み、そして吐き出す様が生々しく、それがとても心地よかった。
特に、噴水前で二人の手が重なるところ、あの時、草壁くんも、佐条くんも、それから観客も、全員息をしていなかったのではないだろうか。
大きめの映画館、少なくない人数、にもかかわらず身じろぎの音も聞こえないような映画館は初めて体験した。
各々がスクリーンと向き合いその結果滲み出た感慨が同じ方向を向いていた、結果論としての一体感は、人と感想を語り合うでもなく他人のたてる物音も気になる私が、音響とスクリーンが大きいこと以外に初めて「映画館っていいなあ」と思えた点だった。
 
映画について。
とにかく、原作への愛が随所に感じられる映画であった。
スタッフロールに、憧れの明日美子様の筆跡で大量に描かれた名前、あれ、嬉しいだろうな、と思った。
アニメにしろ映画にしろ、映像化されると原作との台詞の違いが気になって仕方がなく、気に入った台詞がカットされていると悲しくなる。
(刃衛の話をしています)
「同級生」は、書き台詞、鼻歌、台詞のない脇役の顔まで厳密に再現されていた。
忠実に、壊さないように、大切に扱われているように思った。
 
作画は、ただの再現ではなかった。
それはそうだ。ただ再現するだけなら漫画を読んでいれば済む話だ。
パンフレットを買い、家に帰ってじっくり眺めたが、いかんせんとにかく手足が長い。明らかに原作より長い。
そしてそれはそうするよりなかったのだと思った。
よく行く本屋さんに、「Jの総て」3巻 飛び降りシーンの複製原画が展示してある。
明日美子様はいつだって繊細で美しいが、画面からはみ出すような迫力のある大コマにも大変魅力を感じる。
その絵を、動画として再現するには、「手足を長くする」となったのでは?と勝手に思った。
漫画のアニメ化作品を真剣に見る、というのを殆どしたことがないので、よくアニメを見ている人からしたら当たり前の感想なのだろうか?
少なくとも私は、作画の「全く同じではないが結果として受ける印象が同じになる」というのに大変感動した。アニメってすごいね。
 
ともかく、映画は大変大満足で、また初日の初回に立ち会いその空気を体験できたことはとてもよい経験であった。
勢い余って購入したBlu-rayの到着がとても楽しみだ。
 
 
 
ここからは蛇足なので、まず私の立場を明確にする。
私は腐女子ないしはオタクを自称するのに憚りがある。言動がオタクっぽいし思考回路が腐女子っぽいのは認めるが、私程度にしかアニメや漫画に情熱を注いでいない人間がそんなことを自負するのはおこがましいからだ。私にそんな覚悟も生き様もない。あと世代のせいか、「オタク趣味は秘するもの、さもなくば迫害。」が染み付いているせいもある。
余暇と可処分所得の主な使い道はライブハウスに行くことで、まれにライブの企画を行っている。
「同級生」公開初日はちょうど、お手伝いさせてもらっていたイベントの当日だった。
 
なぜこんなことを書いているのかというと、私と、そのイベントの中心であった「HOMMヨ(オム)」というロックバンドが出会ったきっかけが「同級生」だったからだ。
 
HOMMヨはクールで硬派で無骨で、なのにしなやかで熱く、余計なギミックのない美しいロックバンドだ。
私がHOMMヨを初めて知ったのは、Twitterに上がっていたボーカル ニイマリコさんのイラストがきっかけだった。
ニイマリコさんの絵柄が大変に好みであり、どんなバンドだろうと音源を聴き、ライブに足を運んだ。少し調べたら、HOMMヨのサイトは今をときめく雲田はるこ先生の絵で飾られ、親交が深いということも分かった。
(なんなら阿仁谷ユイジ先生の描いたHOMMヨの似顔絵だってインターネットに転がっている。私は新宿motionで声を大にして、雲田はるこやぞ!阿仁谷ユイジやぞ!わかっとんのか!わかっとるよな!と伝えたい。)
あまりにクールかつ熱量のあるライブに打ちのめされた私は、メンバーのかっこよさも相まってしどろもどろおっかなびっくりその日の感想を伝えた。それを暖かく迎えてくれた上に、「CD買ってくれたし、るろうに剣心、誰でも描きますよ」と言っていただいたのに私は「同級生の草壁くんを描いてください」とお願いした。とんだクソジャンル外スケブ野郎である。
 
なぜ草壁くんだったのか。
私は佐条くんが好きなのに。佐条が一番だ。
 
漫画や小説に出てくる男の子は、みんな私にとって都合のいい存在だ。私のことを好きにならない代わりに、私のことを絶対に嫌いにならないからだ。
BL漫画に出てくる男の子はさらに都合がいい。土俵が違うから。
 
高校生くらいから、バンドを聴くようになった。簡単にのめり込んだ。
同じバンドが好きな同級生と「アイドルとか女優さんとか一般人女性と結婚なんかしないで、他のメンバーとずっと遊んでくれてたらいいのにね」なんて話をしていた。ジャニオタの子も似たようなことを言っていた。
ステージの上どころか紙面や画面の中から出てこないバンドマンは、実在の人物より漫画の登場人物に近い存在だった。
私がライブハウスに通ったり、SNSを始めたりするよりも前のことだ。
 
バンドなんてCDを聴いてライブを見たらそれで充分のはずなのに、なんで雑誌を買いあさって、インタビューを追って、握手やサインをして貰いたがって、名前を覚えてくれたら嬉しくなってしまうんだろう。
私とバンドの間には音楽以外あってもいいものはない。
音以外、ステージの上以外のものを求めるのだとしたらそれは全部虚構だから、相手が実在しようが実在しまいがこの際どっちだっていい。じゃあ、実在するバンドマンなんかより草壁くんのほうがずっといいじゃないか。
だって、草壁くんは全部持っている。
漫画から出てこない、佐条くんが好き、ギターを弾いている。
(私にとっての2次元至高のバンドマンはヤマシタトモコ先生「くいもの処 明楽」の鳥居くん。
賢い・暗い・性格が悪い、三拍子揃ったギタリストだ。ギターを弾くシーンは一度もない。)
漫画だけ読んでれば、実在のバンドはCDを聴いてライブだけ見てればよくない?余計なこと考えないで済むね。
SNSとかもうよくない?アー写とかいらなくない?
だって実在する人間が中村明日美子様の描く絵に勝てるわけないじゃん。
 
もう、草壁くんがいればよくない?
 
こんがらがった末、「実在するかっこいいバンド」であるHOMMヨの「実在する」ニイマリコさんに草壁くんの絵を描いて貰ったらどうなるかな、と思った。
だから、絶好の機会だ!とクソジャンル外スケブ野郎として絵を描いてもらった。
 
ニイさんの描いてくださった草壁くんを見たとき、私の心は酷くすっきりした。
草壁くんのギターの音は聴いたことないけど、ニイさんのストローク一発で会場の空気が塗り変わるとき、背中がぞくっとした。
草壁くんのほうが、私の愛でるバンドマンとして都合が良い、それはもう変わらない。
それはそれでいいじゃないか、と思った。
 
草壁くんはこれからどんなギタリストになるのだろう、と想像する。
目立ちたがりなギターソロで、でもずっとギターばっかり弾いてるから実はバカテクで、器用だからアルペジオも粒ぞろいで、意外とクリーントーンが綺麗で、使わないのにビッグマフを持ち歩いているんじゃないかな、とか。
バンドを何個かやって解散して、引っ張りだこのサポートギタリストをやってるんじゃないかな、あんまりずっと1つのバンドを続けているイメージは持てないから、複数の人の固定サポートかな、とか。
 
そんなことを想像しながら読んでいる。
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