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白昼夢、或いは全部勘違い

コンテンツの消費

私の考えた「愛してる.com」

http://contrex.hatenablog.com/entry/2015/03/18/224215

こちらの記事(面識もない方のブログを引用してよいのか、勝手に失礼します)をTwitterで見かけて、なるほど!と思いました。とても面白かったです。

あと、ここまできれいにまとめる考察が羨ましかったです。

のちに大森さんも配信かなにか、ソースがなくて申し訳ないのですが、「アイドルガチ恋ソング」と言われていたのできっとそうなんだと思いますが、私はこの方のブログを読むまで「ごく身近な男の子への恋の歌」だと思っていました。

 

MVも公開された今、どう聴いても「アイドルガチ恋ソング」であるところですが、私には「アイドルにガチ恋する」という経験がないので、私の思った「愛してる.com」をこれ以上薄れないうちに書き留めておく次第です。

思慕の相手は誰か、高校の、隣のクラス(1年3組)の喋ったことのないサッカー部の男の子です。

喋ったこともない、中学校も違う、友達の彼氏の友達、彼女はバレー部、そんな人です。

サッカー部なのに物静かな彼です。

 

じゃあ、この「愛してる.com 君の全てが載ってるサイト」を作ったのは?

この歌を歌っている女の子です。便宜上、「私」とします。

彼について知り得た情報を、非公開サイトにぽちぽちとまとめている、そんな女子高生はまあ、怖いですね。

なので、「愛してる.com」という名前のつけられたノート=架空のサイト、くらいにしておきます。そうじゃないと怖くてこの話が進みません。

念のためお伝えしておくと私はそんなことしていないですし、私が1年2組だったころに好きだった人は3年8組でしたし吹奏楽部でした。

 

意中の彼の彼女であるバレー部の詩織ちゃんはセーラームーン以外アニメなんて見たことはないしたまごっち以外ゲームもしたことがないのできっと「水属性」なんて突然言われてもピンときません。

でも「私」はずっと漫画ばっかり読んでいたのでウォータープルーフが何かわからなくても「水属性」なんてお手の物です。水泳が苦手らしい彼のことを「水属性弱い」と表現する程度に漫画脳をしています。つらいですね。

普段はテレビを見ないで勉強ばかりしている「私」も、「恋してる最中」とあれば普段は「こんなドラマ」と切り捨てるもので「泣いちゃう」こともあります。自分で自分が滑稽で「おかしい」です。

恋愛ドラマは世に溢れているのでしょうか。よくわかりませんが、きっとその光景に自分を投影させたり経験に照らし合わせたりいつの日かと憧れたりして楽しむものなのでしょう。

でも、「こんなドラマ」のようなことは隣のクラスの男の子に話しかけることすらできないような「私」には起こりません。

「こんなこと自分に起こらないってわかっていたのに、なんで人を好きになってしまったのか」と恋したことを悔やみます。自分には手の届かない日常を見て泣くのです。

 

彼のよく行くレンタルCD屋さんが、駅前の「あの店」なのも、(おそらくお小遣いのもらえる)25日付近の土曜の午後に行けば高確率で「会える」ことも、すっかり把握しています。ゆらゆら帝国をレンタルしたことだって知っています。

CD屋さんで何度すれ違っても、彼は「私」に気づきません。喋ったこともない隣のクラスの女の子なんて覚えていないからです。

「そうじゃない街角で偶然」会えれば、ああ、街角だから気づかなかったんだな、と思えるので、気づかれないダメージは「あの店」よりほんの少し軽いのです。

 

幸いなことに彼と「私」は同じ下足室を使っています。1組から4組までは南、残りは北口です。

朝から下足室で会えた日は1日とても良い日です。ただ立っていただけなのに、登校してきた同じクラスの男の子に「うわっ!」っと言われても「今日も」「愛してる」ので平気です。

 

小学校にも中学校にも、朝一番で嬉しいことなんて何もありませんでした。

けれど彼の姿を見れること、朝から「嬉しい」なんて「はじめて」なのです。

 

彼と関わりのない「私」は、勿論何かをお勧めされたことなんてありません。

けれど、彼が飲んでいた新商品のカフェオレをコンビニで買ってみたり、朝読書の終わった直後に3組を覗きに行って、彼が無造作に机の上に置いていた小説のタイトルをメモして帰りに買いに行ったりします。

ノンシュガーのカフェオレはちっとも美味しくなかったし、花村萬月は一応最後まで読んだけどそれだけでした。

お勧めされたわけでもないものが好みじゃなくて、勝手に辛い気持ちになる「私」は馬鹿のようです。

それでも、「彼と同じものを持っている」ということへの喜びは代え難く、どんなに趣味が合わなくても「それでもついて」いくのです。

いつか「この学校に『花のノートルダム』を読む人がいるなんて」と言われる日を夢見ているのです。私が嶽本野ばらちゃんでいっとう好きなのは「ロリヰタ」同時収録の「forever」です。

ジュネなんて読んだことありません。

そして、彼を真似て読んだ全く趣味の合わない小説の感想を「愛してる.com」にしたためるのです。

 

「家族で外食」して「ばったり会う」と「なんか照れる」どころではないです。

なぜなら私の兄弟は「よく喋るがコミュニケーションが取れないタイプのオタク」だからです。話が逸れました。

「恋してる最中」であるところの「私」ですが、「私」が彼を好きだなんて話そのものが「NG」です。彼に、「私に好かれている」だなんて欠点があってはならないのです。

(そんなことしない人も勿論たくさんいるんでしょうけど)「女の子」(あるいは若い子)の日々を勝手に「きれいな」「思い出」(というなの消費者にとって都合のいいコンテンツ)として容易く消費する「大人」は、少なくないと思っています。

試合は見ないで熱闘甲子園だけ見る私も、高校球児をドラマとして消費しています。本人たちにはドラマじゃなくてただの現実なのにね。(制服や学生に固執する大人は、思春期に思春期たる経験ができなかったのかしなかったのか、とにかくそれを持たない人だと聞いたことがあります。私はその一人です。)

そんな大人が消費するのは「女の子」の中でも幻想を押し付けるに足る(足るか否かの判断もまた消費者がするのでしょう)子だけで、それをもってして「少女性」を一方的に特別視しているのだと、攻撃的な言い方をすれば、思います。

消費される側の女の子に入れない「私」は知っています。勝手な消費者である「大人」が押し付け崇める「思い出」は、自分は持っていないのです。それでも、「私」の思い出は大人が消費するような「きれいな」ものでなくても、「彼」に関する一方通行の日々は、「腐る」ことなくそこにあってほしいと、「私」は思うのです。

 

誰かを好きだと思うことも、それを許されないと思うことも、それでもやめられないことも、血液型と星座が同じで嬉しいことも、彼の好きな本やCDを真似ることも、「私」には全部「はじめて」です。

「あげる」とは、相手がそれをほしいと思ってくれる時にだけ、遣うことのできる言葉のような気がします。

きっと「彼」は「私」の些細な「はじめて」なんて欲しがらないし、貰っても戸惑うでしょう。それでも、「彼」に(こっそりと)(彼のあずかり知らぬところで)あげた「はじめて」をひとつひとつ数えることくらいは、許されてもいいと、許してあげてほしいと思います。

 

「わかるまで」、誰がなにをわかるまで、でしょうか。

ひとつ目は、「私」が「彼」を「わかるまで」。

どんなに「彼」の音楽や読書の趣味を真似ても、ひとつもよさがわからないのです。バンプオブチキンでは駄目なのでしょうか。「彼」の好きなものはみんな好きになりたい、どこが好きなのか聞くこともできず、ただ繰り返し「わかるまで」。

また、「私」は「彼」について、断片的な知識しか持ちません。「知っている」ことはあっても「わかっている」ことはないのです。

彼が部活の後にシーブリーズをつけることは知っていても、それが、彼の彼女が使っている制汗剤と混ざってもおかしな臭いになって一緒に帰るのが嫌にならないようにと揃えられた香りであることも、実は、人工的なレモンは少し苦手な香りだけど我慢していることも、わからないのです。

「私」が「彼」をわかる日は、きっと訪れません。だから、「わかるまで」「愛している」と誓います。

ふたつ目は、「彼」が「私」を「わかるまで」。

「私」は、「彼」が「私」なんぞに好かれていることそのものが、完璧な「彼」を傷つけるものだと、損なうものだと考えています。

だから、もし、万が一、口をきいたどころか目を合わせたこともない「彼」に、「私」の気持ちが知られてしまったら、この思い過ごしのような一方通行の恋はおしまいです。だからせめて、「彼」が「私」の持っている彼へのおぞましい気持ちを「わかって」しまうまではせめて「愛している」のです。気づかれたらそこで「絶対」終わりにするから、それまではせめて「愛して」いたいのです。

 

後ろの黒板に「彼」が書いた、何の変哲もない「落書き」を、「私」はこっそりケータイで写真に撮って、こっそり毎日眺めています。

国語の教科書から抜き出された「斬新」でもなんでもない言葉は、年齢より落ち着いた雰囲気にそぐわない、年相応の字で綴られていました。

休みの日なのにわざわざ受けに来た模試が終わって、自己採点をして、復習をして、学校にもう誰もいなくなったのを確認して、こっそり撮った写真をずっと帰りのバスで眺めている、そんな「楽しい日曜日」のお話です。

 

「もしかして、中島敦、好きなのかな?私も好きだから嬉しい!」と書いて、今日も「愛してる.com更新」です。

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