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白昼夢、或いは全部勘違い

コンテンツの消費

MONOEYESのアルバムがとてもよかった話

2015年において私と親しくしてくれている人も、私の好きなミュージシャンも、多分誰もMONOEYESを聴かない。
けれど、MONOEYESのアルバムもライブもとてもよかったので感想を書く。
もし今が2007年だったら、お気に入りのバンドの曲を1曲ずついれたマイミクと交換するCD-Rの1曲目をMONOEYESにしていた、多分、My Instant Song。
売れてるとか有名とか若い子に人気があるとかモッシュとダイブが下手とかそういうの全部置いておいてさ、聴いてほしいなと思う。

MONOEYESは、バンドだ。
バンドやろうぜ!という気持ちを喚起させるバンドだ。
バカテクバンドやオシャレなバンドはたくさんいるけど、それ以前のもっとシンプルな興奮、「バンドやろうぜ!コピバン組もうぜ!今!この曲を弾いている!」という喜びを抱かせてくれるバンドだ。
(コピバン組んでないから予想だけど。)
なんだよバンドって楽しそうだな!よしバンドやろう!と思わせてくれたのはとても稀有な存在だったのだと、(もはや特にそんなことを思いもしない)28歳になってふと思った。
(もうそんな気持ちを私に喚起させることができるのは股間からブルースが溢れるおっさんだけかもしれないが、しかし別にそんな気持ちにはならない)
(そういえば昔なにかのフリーペーパーでバンドの人が「個人企画する人ってなんでそんなに音楽好きなのにバンドやらないんだろう?」と言っていたが、私はいくつかの楽器を通算16年間やった上で、自分は楽器を弾くことが別に好きではないとやっと気が付いたので企画はやるがもう楽器はやらない)

「この曲を聴いた子がそれをきっかけに音楽を始めたら、そのとき自分が音楽をやっている意味が生まれる」とかなんとか、別にMONOEYESではないミュージシャンが言っていた。
それはとても理想的なひとつの目標だと思った。

一緒に立ち向かってくれるわけでも、私の全てを理解しているわけでもない。
ただ、毎日せいいっぱい生きてる中で、たまに「帰ってこれる」場所=ライブハウスでずっと待っていてくれる、そんなバンドだ。
ライブハウスとそのお客さんにに帰属意識も仲間意識も全く持たないが、ああ、ここにきてよかったなと心底思わせてくれる。

サウンドは至ってシンプルだ。
流行りも廃りもなんにもなくて、ただ、ギターとベースとドラムと、あと歌があって、それを重ねてバンドになって、それが楽しくて楽しくて仕方のない音だ。
口ずさみやすいメロディも、わかりやすい起承転結も、とっつきやすくて人懐っこさを感じる。

何より彼の書く歌詞が大好きだ。
捻くれていて友達が少なく、すぐ他人を嫌いになりいつも不機嫌で、自己肯定感もなく自尊心も低くそのくせ無駄にプライドの高い私が心のよりどころにしているのはいつも彼の歌詞だった。
それは今も変わらないのだと、MONOEYESの歌詞カードを初めて読んだときに思い出した。

I just try to keep on going today
Just A Little More Time 
When it feels so hard to breathe 
My Instant Song 
Thinking about mistakes from yesterday 
Run Run
Do I have to win again 
Do I have to run again 
Do I Have To Bleed Again 
If you sail back to your teenage days
What do you miss
What do you hate
Remember you are still the same 
Remember me

あんなに人気があって、あんなにたくさんの人の心の支えになる人の書く歌詞とは思えない。
私が高校生の時クソ田舎のジャスコでもCDが買えた程の人の書く歌詞とは思えない。
あの時の彼と前よりも年齢を近づけた今、2000人の前で彼はどんな気持ちで「俺はくそったれの馬鹿野郎、だからあの子はいなくなったんだ」と歌っていたのだろう、とふと考える。

先日、zepp nanbaへMONOEYESのワンマンライブを見に行った。あの新木場コーストからここ6年の間に私が手に入れた中ではおそらく1番のプラチナチケットであった。
(新木場コーストは今のところぶっちぎりで一番のプラチナチケットだ)
夫が間違えて申し込んだという2階席は随分と快適で、私はもうあのおしくらまんじゅうに突っ込んで行くことはなくなったのだと痛感した。

開演前に現れた細美さんは、
「スタンディングのライブに来たことがない人は後ろに下がってください」
「スタッズとピアスは危ないから外してください」
「ディルドが入っている子もいると思うけど、危ないから抜いてください」
(このくだりに爆笑していたのは2階席だけであったのは大変に罪深い)
などと、人間ここまで丸くなるのかと思うようなことを述べたのち、
「細美が新しいバンド始めたって!聴いてみるか!なんだこれ速い曲じゃん!10年前を思い出すわー!という人は、後ろに下がってください。お前の体は10年前に比べて衰えています」と言った。
ああ、こちらの手の内は全て見透かされている、と思った。

MONOEYESのライブは、大変に楽しかった。
ずっとCDを聴いていた大好きな曲が目の前でなっていることに対する高揚感、ライブハウスって楽しいな、毎日どうにもならないけどなんとか生きててよかったな、そんな気持ちで家に帰った。

10年だか8年だか前、私はELLEGARDENが、大好きだった。

私は彼らがいなかったら、今よりずっと無気力で不幸な人間だっただろうと、きっと今の方がずっとましだろう、と、「もしも」を確認する手段はないけれど、殆ど確信している。
ELLEGARDENが大好きだったと公言できるようになったのはつい最近のことだ。
2006年ごろの話をする。
ELLEGARDENが好きだと言うと、(大学の軽音部においてマイナーなバンドを聴いている俺=音楽大好き=かっこいい、という浅はかな自意識に基づき)そんなに音楽聴いてないんでしょ?と思われるのが嫌だったし、(同じ自意識があるが故に)他のELLEGARDENのファンもみんな嫌いだった。そして、彼らにそういうパブリックイメージがあることをやむなしと思っている自分と、自分がそのように思われるのが嫌だという理由で、彼らが好きだと公言できない自分もまた嫌だった。
よっぽど仲良くなった人と内緒話のように、どんなに彼らを心の支えとしてきたか打ち明け合った。
(その延長で私たちは結婚したのかもしれない。)

活動休止後の各々の活動を直視することができないまま遠くから眺めていたが、MONOEYESのアーティスト写真を見たときに「ああ、帰ってきたんだな」と思ってCDを買い、込み上げるものを処理できずに叫んだりCDをソファに投げつけたりしながら聴いた。
体力の衰え無視して行ったサマーソニックでわんわんと泣いた。

それはノスタルジーでもなんでもなくて、今の私に必要なのが彼と彼の音楽と彼のバンドの音だっただけの話だ。

ELLEGARDENを突っ込んだMDがないと高校に行けなかった。
今はMONOEYESを突っ込んだiPhoneがないと会社に行けない。
悲しいことだとも成長していないとも思わない。
そんな音楽があることは幸運だと思う。


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